恋愛温度、上昇中!
「色気の問題ですよ、やっぱり」
マチちゃんは鼻息荒く拳を握った。それは暗に私に色気がないと言っているようなものだけど、気にしない。実際、不在だし、もしかしたらやっぱり存在してないのかも。
「まずは出会いですよね」
「出会い?」
「なんてゆーか、体を駆け抜けるような…」
マチちゃんは体を自分で抱き締める。
「駆け抜ける?痺れるって事?水に濡れたコンセントをうっかり触った時みたいな?」
先月挿さったままのコンセントに水を零したの拭き取ろうと触ってしまったのだ。あれはびっくりした。本当にビリッと指先に伝わったんだもの。良い子は絶対真似してはいけない。良い大人はそもそもそんな行動をしない。
「紗織さん、それ感電です。危険です」
「……ですよね」
マチちゃん、いつからそんな冷たい瞳ができるようになったの。
「……じゃあその人から目が逸らせなくなるような」
気を取り直して、目を輝かせたその切り替えの早さが眩しい。
「それは分かるかも」
「本当ですか!?」
「この間のコンビニでね、なんてゆうかカツラのズレちゃった店員さんがいたのよ。もう、見てられなくて。だけど見ちゃうっていうか」
カツラを否定はしないけど、堂々と出してしまえば逆に何にも気にならないのに。
「…なんか無理な気がします。というか絶対無理です」
「え?なんで?」
マチちゃんははぁぁと長い溜め息を吐いて、そういう話じゃないんですよと白い目をした。
「……そりゃあ、マチちゃんの言ってる事は分かります」
私の言葉にマチちゃんは「ほんとですかぁ?」と胡散臭そうに語尾を上げた。
分かるよ、物理的なものじゃなくて心理的なものでしょう。だけど、理解出来る事と実際自分に起こる事は別だもの。