恋愛温度、上昇中!
「私はいい。出会いなんて」
期待するものじゃないし。そこら辺にポンと置いてあるものでもない。結局、何かしらの努力をしなきゃ駄目な話。
「面倒くさいし」
何度もいうようだけど結婚願望はある。同世代の友人達が結婚して、子供とかできて『独身はいいよねー』なんて言われるとうるせーよ、とか思ってしまう。なんの予定もない自分に焦る時だってある。だけど、一から恋愛をする気力がない。それがどんなものだったかも忘れてしまった。
ジョッキをぐいと飲み干せば、喉を通る爽快感にくぅと息を漏らす。私の恋人は一杯五百円のトータルちょっとお金がかかるビールだ。
「さ、紗織さん」
返事にしてはやたら動揺した声。どうしたのかと視線をマチちゃんへ向けると、マチちゃんは赤い顔にどこかぼんやりとした目線を私を通り越して遥か上に向けていた。
「どうしたの?酔った?」
まだ一杯目。早くない?今日はまだまだ飲みたいの。
「ち、違います」
「じゃあ何?」
眉を寄せて、マチちゃんに聞き返せば、
「あ、あの。あ、はい」
小声で呟いてコクリと頷く、成立してない返事。視線は相変わらず上にある。
なにそれこわい。
私はゆっくりマチちゃんの視線の先に体を捻らせて振り返った。