恋愛温度、上昇中!

通りかかった給湯室で、チャリンという金属が床に落ちる音と一緒に聞き慣れた甘い声がする。


「──あ、落ちちゃった」


小倉さんと、グラフィック担当の藤本さんだ。

「てゆーか、主任って~本当、固いよねぇ?絶対オトコいないでしょ」

いつもは舌っ足らずな小倉さんがその口調を若干隅に追いやってハキハキと喋っている。
普通に話せるんだ。驚き。男、は実際いないから仕方ない。


「そうね、主任。そんな気配ないものね」

藤本さんが答える。

「今朝もピリピリしちゃって、本当、何様って感じ」


小馬鹿にした口調に、あたしってばひょっとして、俗にいう『お局様』なのかとか一瞬思ってしまった。

「コーヒー、主任の分はこの落ちたスプーンで混ぜても問題ないよね~」

含みを持たすような鼻につく声。続けて、「ついでに、踏ん付けてもバレないよね~」


と笑う声。勘弁して欲しい。



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