恋愛温度、上昇中!
「し、主任」
あたしに気付いて、顔を青くする二人。
「コホン…珈琲は自分で、淹れるから、そのスプーンは洗うけど構わない?」
あたしは、咳ばらいをして臆する事もなく二人の間に割って入った。こうなれば仕方ない。落ちたスプーンを踏ん付けてそれで掻き交ぜたい程嫌われていたとしたなら、そのストレスを受け止めるのが良い上司なのかもしれないけど。
大人としての、ずる賢さや、人付き合いには慣れてきたのに、いつだってあたしはうまい立ち回りが出来ない気がする。
小倉さんと藤本さんは顔を強ばらせて、
「す、すいません」
と頭を下げた。
その素直さに少し驚く。こうして『謝る』事が出来る事は。多分、大人になったからなんだろうか。