恋愛温度、上昇中!


『今晩空いてる?』


私の声も待たず、柔らかい声はまるで《空いてるよね?いや空けてね》と言ってるように聞こえたんだけど。空耳か?


「…この間はすいませんでした」


私はとりあえず返事を返す前に前回の非礼を詫びる。


『うん、じゃあ今日は埋め合わせねー』


山都さんの声は相変わらず柔らかくて、優しい音をしている。あの真っ黒な表情さえ見なければ、声だけで落ちてしまう子がいても不思議じゃないのに。



私は溜め息をひとつだけ零して、分かりました、と返事をして通話を終えた。


…別に急ぎの仕事もないし、今日は飲むのもいいかもしれない。
山都さんにはあの日、すぐに連絡をいれたけど、あのままなのは感じ悪いわよね。まあ、あの緩い雰囲気なら気にしてはいないだろうけど。




あの日を思い出して、頭痛のする感覚に無理矢理腰を上げた。



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