恋愛温度、上昇中!
「主任~、社長何だったんですかぁ?」
甘ったるい語尾。
ふわりと香るフローラル系の香水。
細くて女の子らしい声は昨日居酒屋で聞いたものと同じで苦い気分になったけれど、私が彼女達の女性特有の甘さを理解出来ない様に彼女達だって私を宇宙人のように思うのは仕方のない事だ。
「今度の企画の事ですかぁ~?でもお話長かったですねぇ~」
ふわりとした茶髪の巻き髪にくるんとカールされた長い睫毛。人懐っこい笑顔を振り撒いて彼女は私を覗き込む。
「…小倉さん、あなたまだあの書類まとめてなかったでしょ?あなたのお喋りの相手は私じゃなくて、そこのパソコン」
3日前に頼んだやつだ。何しに来てるの?遊びに来てるの?なんて思う私が好かれる要素はどこにもない。もっと優しく言えば良いのに。そぉなのー、企画もだけどぉ、男と女について勉強させられちゃった~きゃは!なんて言えば話は盛り上がるのか。駄目だ。無理だ。超無理だ。
「はぁ~い」
小倉さんは少し拗ねた様に唇を尖らせて自分の席へと帰った。
フリフリと形の良い腰が揺れる。
ーーー綺麗にラッピングされたピンク色のプレゼント。小倉さんを見るとそう思う。
別に、小倉さんだけじゃない。異性の気を引く仕草を心得てる子をみるといつもそう思う。