恋愛温度、上昇中!
そんなことをツラツラと考えていたら、向き合う画面に影が落ちた。
目線だけ上げれば、
「高見ちゃん、これ可愛いー」
どこから現れたのか取引先の部長の山都さんだった。
。色素の薄い髪、眼鏡の奥の優しげな瞳。この綺麗な顔立ちの彼が来ると社員の色めき度が断絶跳ね上がる理由は今いち理解出来ない。この人、腹の中は真っ黒だ。
彼が指すのは複雑な薔薇模様のパッドの縁にピンク色のトーションレースがあしらわれ、そのままストラップにしたデザイン。
実用性は低いけれど、とにかく可愛いものが作りたくてイメージした。レースやピンクやリボンが私は大好きだ。不似合いなのは知ってる。
「高見ちゃんがデザインしたのって本当可愛いーよね」
山都さんが笑いかける。多分、何人かはこの素敵笑顔に騙されるんだろう。だが、私は騙されない。露骨に嫌な顔をしてしまったけれど、山都さんはまるで気にした風もなく何が愉しいのかククと笑った。
「なんかベッドに誘われた事がない無垢な感じ。いいよねー、ゾクゾクする!色気のない高見ちゃんが着けるとますます、処女度が増すね!」
セクハラ変態眼鏡と罵りたい。
「ベッドの上じゃなく、服の下で楽しむランジェリーですから。そもそも私をイメージしていません」
ぴしゃりと言い切れば、山都さんはうんうんと頷く。
「是非次は高見ちゃんをイメージしてねー。クマさんプリントのパンツでも僕はドキドキするよ」
じゃあねー、と軽やかに背中を向けた山都さんを全力で殴りたい衝動を抑えた私を褒めて欲しい。
クマさんのプリント?……それを履いた自分のお尻を想像してこんなアンバランスは求めてないとすぐ追い出した。