恋愛温度、上昇中!

それから短い会話をして、その場所を後にする。新橋さんの勤める会社は意外にもこの近くで、大手の税理士事務所だった。


「知らなかったの?」

「…言ってたかもしれないけど」


聞いてなかった。


祥子は溜め息をつくと

「あんな、とびきり、綺麗な男、久しぶりにみたわよ!!」


と大きな瞳を輝かせた。彰俊の話で影を落としていた色は綺麗に取り除かれている。単純な思考回路が羨ましい。


とりあえず、知り合った経緯をサクッと話した所。まあ内容なんて薄っぺらい。一度会っただけだし、話す程の事もなかったから。

「で、あんたはその内の誰かとどーにかなったわけ?」

祥子は興味を隠さず聞く。

「ないような、あるような」

歯切れ悪くしかめっ面をした私に祥子はグイと近付いた。

「どうゆうこと?」
「関谷、って人と動物園に行ってラーメン食べた」
「つまり、デートしたってことね」

デート、って。だからその甘い響きはやめてほしい。

「で?キスくらいしたの?」

祥子の瞳はランランと輝いている。私は、それを目の当たりにしてうっと後退った。

「動揺確認。したのね」


満足気な祥子。私はブンブンと頭を振った。した、けど、してない!
あれは犬に噛まれたのだ。



「紹介しなさいよ、関谷って人も。確実に、スピーディに」


祥子は命令口調でそう言い放つと「仕事に遅れるわ」とさっさと行ってしまった。



私は溜め息で見送っただけ。

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