誰よりも愛してる


見上げると、あと数センチで届く位置に彼の唇が見えた。


その唇がゆっきり動いた。


「もしかして…俺のせい?」


私は何も言えずに、ただ思いっきり首を横に振ったんだ。


それなのに


彼の腕がゆっくり伸びて


優しく、私を抱き寄せた。


「自信過剰かなぁ…」と呟いた彼の声は少しだけ震えていて


本当だったらすぐにでも離れなきゃいけないのに


私はゆっくり目を閉じて、この頬に伝わる温度と


背中に感じる彼の手の大きさを確かめていたんだ。


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