少年少女リアル
　そういえば、前にもこんな話をした。
どうやら、夏目さんは僕に親近感を抱いているらしい。心を開いているというわけではなさそうだけれど。
僕からすれば、「どこが？」と疑問が飛び交うばかりである。

「どうして？」

「頭が良い分、素直に人付き合いができないところとか」

肯定はしない。
冷静さの足りない今の頭では、言葉をそのまま捉える事しかできない。

「頭が良いっていうのは、勉強が出来るか出来ないかじゃなくて、狡賢い……じゃ、言葉が悪いわね」

夏目さんは緩やかな弧をなぞるように目を動かした。

「何て言えばいいのかな……、思考が鋭いと言うか」

「何となく分かるよ」

夏目さんの事を思うと、上手く言い表さなくとも、直感的に意味が分かった。

「いつも相手の腹を読もうとしてしまうから、打ち解けられないし、心を開けない」

僕が夏目さんを見るとおりに、彼女は彼女自身を見ているようだった。
それから、彼女の言うとおり、確かにそれが僕に共通している事も何となく分かった。
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表紙・目次

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