少年少女リアル
 言いたい事を言い終えたのか、夏目さんは再び携帯を手に取った。

「まぁ、決して要領が良いとは言えないわよね」

それが自分自身にも当てはまると知りながらも、受け入れ、理解している夏目さんは、読書愛好家とは思えないほど現実主義者で、聡明だった。

「例えば、餡パンが一つだけあって、それを二人で分けるとするじゃない?」

「うん」

「パンを二つに割るんだけど、どちらかが微妙に大きくて、もう片方が微妙に小さく割れてしまった場合、曾根君ならどっちを選ぶ?」

「小さい方だな」

間髪いれずにそう答えると、夏目さんも時なく「どうして?」と聞き返してきた。

「どうして、って……相手に大きい方を譲るだろ、普通」

「どうして譲らなきゃならないの?」

ああ、そうか。

「欲張りだと思われたくないから」

なんて厭味な誘導尋問だ。


「考えすぎて、結局損な役回りを選ぶ事の方が多いかな。僕は」

「そうそう。良く言えば、空気が読めるって事よね」

この人にはあまりに不似合いで、思わず、口が引き攣ってしまった。
夏目さんという人間は、空気等読まないじゃないか。
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