少年少女リアル
 ふふ、と目を合わさずに笑うと、夏目さんは暇潰しの携帯電話の画面へとその視線を沈ませた。

「本当のところは、計算した上で素直に利を選べるほど、欲に忠実な人が一番強いんでしょうけど」

皮肉にも、僕は、僕等は、素直に利を選べない。

結局は、相手からの好感度という利を手に入れているのかもしれないけれど。

他人からの目を考えて、考えすぎて、自分の首を絞めている。

僕という人間は、そういう奴だった。そして、これからもそうなのだと思う。


「きっと、浮気とか、すぐに見破っちゃう質ね」

「ははは」

「自分が不幸になるのを知っていても、目敏いから気付いてしまう」

気付かなければ良かった事まで、だ。
目を塞ぐか塞がないかは、また別の問題で、夏目さんと僕では恐らく違うだろう。


「夏目さんって、本当は何歳?」

「どういう意味かしら?」

顔も上げずに、声色だけで笑われてしまった。

「同い年とは思えない観察力だと思って」

「私の憶測でしかないんだけどね」

これが憶測だとしても、僕はかなりクリアーに見透かされたような心地がした。

狡賢くて、醜い自分。

それが人間の、僕の本質なのだと言葉で突き付けられた気分だった。
けれども、不思議と、夏目さんに対する恥ずかしさや後ろめたさのようなものは感じなかった。本当に、不思議な話で。


「夏目さんの頭の中がどうなってるのか、一度でいいから覗いてみたいよ」

「きっと一面花畑だと思う」

「僕の予想では、図書館データベースみたいになってると思う」

どう答えていいか分からない、と夏目さんは笑った。
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