少年少女リアル
第六章 雨垂れ
長月と言えど、今宵は月など見えそうもない。
しとしと降る雨が月だけでなく、空ごと曇らせている。
校舎内の時計はまだ午後六時を指したところだというのに、余程機嫌が悪いのか、ひどい曇天だ。
蛍光灯が妙に黄色く感じるのは、今日の背景が鉛色だからか。
色とりどりに着飾った校舎もそのせいで、どこか鮮やかでない。
張り付いていたカッターシャツの首元をはたはた扇ぐと、湿気た肌に温い風が通り抜けていった。
どこからか楽器の音が聞こえてくる。
いつかは疎らでただの音でしかなかったけれど、今ではすっかり聞き覚えのある旋律だ。
「わ! あの人……」
ふと耳に入ってきた声へ顔を向けると、前から歩いてきた女子生徒がチラチラ視線を送ってきていた。
薄笑いながら話し声が飛び飛びに聞こえてくる。
「ほら……執事の……、ねっ!」
誰が執事だ。
別に僕は執事じゃない。
わざと視線を外す。
擦れ違う瞬間、沈黙が走る。
雨音とリズムの合わない旋律が再び流れ込んでくるも、耳に残らず消えていった。
しとしと降る雨が月だけでなく、空ごと曇らせている。
校舎内の時計はまだ午後六時を指したところだというのに、余程機嫌が悪いのか、ひどい曇天だ。
蛍光灯が妙に黄色く感じるのは、今日の背景が鉛色だからか。
色とりどりに着飾った校舎もそのせいで、どこか鮮やかでない。
張り付いていたカッターシャツの首元をはたはた扇ぐと、湿気た肌に温い風が通り抜けていった。
どこからか楽器の音が聞こえてくる。
いつかは疎らでただの音でしかなかったけれど、今ではすっかり聞き覚えのある旋律だ。
「わ! あの人……」
ふと耳に入ってきた声へ顔を向けると、前から歩いてきた女子生徒がチラチラ視線を送ってきていた。
薄笑いながら話し声が飛び飛びに聞こえてくる。
「ほら……執事の……、ねっ!」
誰が執事だ。
別に僕は執事じゃない。
わざと視線を外す。
擦れ違う瞬間、沈黙が走る。
雨音とリズムの合わない旋律が再び流れ込んでくるも、耳に残らず消えていった。