少年少女リアル
 肩を無理矢理離すと、彼女ははっとして、表情を曇らせた。

「……ほら」

怯えた顔で彼女は首を横へ振る。

「向井さんは、僕じゃないといけない理由なんてない」

涙が流れていく。

「誰だっていいんだろ」

「違う!」

「雷が鳴れば誰にでも抱きつくんだろ?」

「そんな……!」

ひどい、ひどい事を言う。そう顔に書いてある。そんな顔をしている。
恨めしそうな目で僕を睨む。

でも、そうじゃないか、と侮蔑のような笑いが口から零れ出た。

「失恋すれば好きでもない他の男に抱きつくし……抱かれれば好きになる」

そして、侮蔑ではない何かが僕の感情を制御できなくする。目が熱い。

「全部、全部、勘違いだ」

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