少年少女リアル
「怒るなよー」
顔を覗き込んでくる。うざったい。
「曾根ってば!」
顔をぷいと背けると、冴木は意地でも視界に入ってやると回り込んできた。
「ちっ、あっ、きっ、くーん!」
「……うるさい」
「あはは、怒ってるー」
「いや、アレはねーだろうよ」
メンバーの一人が鋭く突っ込みを入れた。
唇や眉にピアスが空いている。さっきから半裸のまま、うちわをパタパタさせているけれど、まだ汗が引いていない。
僕には、見ているだけで何とも肌寒い気がする。
「でも、宣伝にはなっただろ?」
「醜態を晒しただけだろ」
「ははは! 俺だったら、ぜってーその格好やだもん」
目の前の僕は無理矢理着せられているのに、「ぜってー」とか言うなよ。初対面なのに。
ライブ中は帽子を被っていたからわからなかったけれど、中はピンク掛かった短髪だ。奇抜。
「ところで、どうだった?」
何の事を言っているのか尋ねると、冴木は目を輝かせた。
「ライブだよ、ライブ!」
「良かったよ」
「本当か!?」
「本当か、じゃねーよ! 駿……お前、また思いっきりミスしてただろ」
「あは、バレた?」
……全然分からなかった。