少年少女リアル
 スピーカー越しの重低音が頭に響く。
リズムに合わせて頭が脈打って、ズキン、ズキンと痛む。

それを紛らせようと、口の中を忙しなく動かすけれど、もちろん効果はなかった。

「辛いな」

「喉飴なんだから当たり前だろ? てか、もらっといて文句言うなよ」

口で息をすると、喉が爽快すぎて、凍り付きそうだ。
間を空けて、冴木が、甘党かと尋ねてきたので、そうだと答える。冴木は興味がなさそうに「意外だ」と相槌を打った。

昨日も似たような話をしたはずだ。


「こんな時に風邪引くなんて損だな」

「本当に」

きっと天罰だと思う。帰って、今すぐに寝たい。

「曾根って、体弱そうだもんな」

「そうかな」

「そうだよ」

そうでもない。

そんな印象を持たれているのか。
冴木とは体格もほぼ一緒だったし、肌もとりわけ青いわけではないのに、どうしてそう思うのだろうか。不思議だ。

「冴木は健康そうだな」

「元気そう、の間違いだろ?」

ああ、そうか。その通りだ。

目が合うと、冴木は噴き出すように笑った。
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