少年少女リアル
「現実の曾根君の言動が、自分の中での、曾根君というキャラクターと一致すれば、曾根君らしいと感じる。一致しなければ、曾根君らしくないと感じる。そういう事だと思う」
そうだとすれば、冴木は、冴木の知っている僕は、よほど美化された人間なのだろう。
きっと、メモを破り捨てたりしない、そんな男だったはずなのだ。
「夏目さんには、どう映ってる? どんな人間だと思ってる?」
この人の目でも、僕は美しく映っているのだろうか。
そんな事、ないのに。
夏目さんは無表情のまま、僕を見つめた。
「そうね……、聡明で、クールで、少し神経質。それから、時々つまらないジョークを言う」
「そんな事を言った覚えはないけど」
「あら、じゃあ、ジョークじゃなかったの?」
「……」
右目の下が僅かにひくりと動いた。
「あと、心の中では不満に思っていても、口には出さない」
気付いていたなら、もっと気を配ってくれたらいいのに。
「それから、人を傷付けないように言葉を選んでいる気がする」
合っていると言えば、合っている。
夏目さんの前でそんな態度を見せた事はない。
けれど、実際はそうじゃない。
言葉なんて選べる余裕もない。
僕は、人を傷付ける言葉を言う。
人を傷付ける。心も、身体も。
自分の感情でさえもコントロールできない。
「そんな人間じゃないよ」
そんな人間じゃない。そんな、綺麗な人間じゃない。
「残念ながら」