少年少女リアル
 夏目さんは、ふっ、と笑った。

「勘違いしないで」

悪役みたいな笑い方だ。
けれど、これがこの人の普通だ。僕には。

「それはあくまで私の中での話。キャラクターは、実物とは真逆ではないけれど、ほとんど違う。虚構でしかない」

そうだ。僕はそんな奴じゃない。
聡明でも、クールでもない。そうなれるならば、なりたいけれど、実際は違う。
美化しすぎだ。


「百ピースのパズルを、たった三ピースだけ見て、全体を勝手に想像しているのと同じ」

「いい例えだ」

「私は曾根君の汚い所も知らないし、むしろ完全に知る事なんてできない。手元にあるピースを増やして、よりリアルな貴方を想像するだけ」


よりリアルな僕――……


現実の僕など、知らない方がいいのに。

汚くて、自分自身気が狂いそうなほど、何もかも嫌な奴なのに。

「知ればきっと幻滅するよ」

「それって自己嫌悪?」

「本当の話だよ」

「そう。だったら、ますます興味が湧く」

やっぱり、この人は変わっている。変態科学者のようだ。

「でもね、曾根君が起こした行動は、全部曾根君らしい行動なのよ。感じる側が知らないだけ」


彼女――向井さんは、知っている。

僕がどんなにひどくて汚い奴か。
保身的で、感情的で、最低で。

それが向井さんの中での僕であるはずなのに。


それでも――……


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