少年少女リアル
第九章 少年少女は疾走する
 無音。

途切れ途切れに遠くから音が入ってきて、次第に雑音が大きくなっていく。まるでラジオの周波数を合わせているみたいだ。

いつもの音量に調節されて、初めて、意識がぼんやりと自分のものに還ってきた。


僕は、今、何を――……


目を開けるとすぐ、「おはよ」と横で声がした。

視界の隅に、佳月が映っている。
少し不機嫌そうな、いつもの表情だ。腕を組んで座っている。


「あれ……」

周りには黄色く変色したカーテンが引かれてあって、ここが保健室だという事がすぐに分かった。

けれど、生憎、ここまで自分で足を運んだ記憶はない。

「倒れたの?」

「隣のクラスの子が連れてきてくれたんだと」

夏目さんだ。
最後に話したのは、夏目さんだった。
どこで話し終えたか、覚えていない。だから、多分そうだ。

はああ、と溜め息が零れていった。

「……ごめん」

「何が」

「今、何時? 文化祭は?」

照明の感じで、何となく昼ではない事が分かる。

「終わった」

さっきよりも深い溜め息が出た。

「最悪」

やってしまった。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。色んな人に対して。
本当に、最悪だ。
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