少年少女リアル
 先生はもう少しここにいてもいいと言って、カーテンを人一人分ほど開けたまま、ベッドから離れていった。


遠くで聞こえる雑音は、後夜祭のものか。
陽気な音楽と、何を言っているかまでは聞き取れないけれど、MCの声が混ざって聞こえてくる。

ぼんやりしていると、先生は再びカーテンの隙間からぬっと顔を出した。

「少し職員室に行ってきてもいいかしら?」

僕が返事をすると、先生は例の如く微笑んだ。

「私が戻ってくるまで、ここに居て下さいね」

忙しなくサンダルを鳴らして部屋から出ていく。
廊下を歩く音がして、すぐに聞こえなくなった。


「お前、昨日先に帰っただろ」

そうだったろうか。
一瞬何の事か分からず、記憶を辿ってみると、嫌な事を思い出した。

佳月の事だから案の定見ていると思う。昨日のいざこざを。いや、いざこざではない。僕が取り乱しただけだ。
一気に、気まずさが込み上げてきた。

「ごめん」

「別に怒ってねーよ。それに、悪いと思ってないなら謝っていらん」

佳月は気怠そうにガリガリと頭を掻いた。

「ただ、様子が変だったから連絡したけど、無視だし」

ごめん、と言おうとすると、舌打ちされてしまった。
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