少年少女リアル
 唐突にそんな事を言い出したものだから、何となく言葉が浮かんでこない。

何を言えばいいのか。

手の甲を額に押し当てていると、佳月ははっと短く溜め息を吐いた。

「別に、お前がどうしようが、何しようが、いちいち口出しはしないけどよ、見てたら一応心配になるだろうが」

佳月に心配という言葉は不似合いだ。いつだって自分中心なくせに。
心配してくれていたなんて、変だ。似合わない。


「何があったかまでは聞かねーよ。ただ、無理に何もないような素振りされるのは、俺は嫌だ」


はっとした気持ちになった。

今まで一生懸命言い訳を考えていた自分が恥ずかしい。
幻滅されないようにと必死でいた自分が、死ぬほど恥ずかしい。


「……悪かったよ」

「そのくせ、たまに自殺でもしそうな顔するし……。お前の体調よりもな、正直、俺はそっちの方が気になんだよ」

言い訳などしなくても、佳月は、僕の事をちゃんと見ていた。

皆、僕が思っている以上に、僕をちゃんと見ている。

言い訳なんか、最初から必要なかった。
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