少年少女リアル
 何が起きているか、分からなかった。

「え、」

髪が僕の首を擽っていたけれど、それに反応する余裕すらない。

顔を押し当てられた鎖骨が熱くなっていく。

ぎゅうう、と抱き締める力が強くなる。
それでも、振りほどこうと思えば、簡単に振りほどけた。


なんて弱い生き物なんだ、

女ってものは。


これが精一杯の力だっていうのか。笑える。


「……ごめんな、さい」

声が掠れていた。
顔を押しつけていたせいで、彼女が口を動かす度に、吐息が漏れる。
シャツ越しに、僕の胸へ届く。

「もう少しだけ、こうさせて」

こんなにも心臓の近くに顔があったら、音が聞こえてしまっているかもしれない。今にも止まりそうな、ドクンという鼓動。

肩が小刻みに震えているのに気付き、僕はそっと背中に腕を回した。
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