少年少女リアル
 これが過ちだった。
抱き返すべきじゃなかった。恋愛感情がなかったのならば。


どうしていいか分からず、行き場を失った両の腕で、華奢な背中を包み込む。

頬に触れた髪からは、甘い香りがふわりと漂ってきた。
次第に嗅覚を凌駕していく。感覚を麻痺させるような、香り。


傍から見れば、きっと恋人同士のような抱擁をしていただろう。傍から見る人などいなかったけれど。

指先に硬いものが当たり、あ、と思った。



その瞬間、妙な感覚に囚われた。


懐に充満した熱、擦れるシャツの音、感覚を麻痺させる香り、背中を這う指。吐息。

五感が凌駕されていたのかもしれない。


正気じゃなかった。
僕は彼女に欲情していた。

壁へ押しやると、彼女はひどく怯えた顔をした。

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