少年少女リアル
日常と非日常は紙一重だ。
僕の過ごした今日と、隣で帰る用意をしている男子生徒の今日は、ほとんど同じだった。と思う。
「風邪か?」
黒縁眼鏡の奥は黒板を見ていたけれど、それが僕に向けられた質問だとすぐに分かった。
「今日元気ないなと思って」
「そんなことないけど」
出来る限り素っ気なく返事をしたつもりだった。
内心では、心臓が一瞬浮いたかと思うほど、ギクリとしたのだけれど。
この気まずい沈黙は、見透かされてのものなのか。
しばらくして「あっそ」と言い捨てると、佳月(カヅキ)は窓際のカーテンを荒く引いた。
カーテンを膨らませて入ってくる風は生暖かかった。
黄ばんだ白が、光に当たって血潮のように赤く見える。
急にガタガタと周りが席を立ち始めた。
いつの間にか終礼が終わっていたらしい。
慌てて立ち上がろうとした時、
「曾根」
「千暁(チアキ)」と準備万端の佳月が僕を呼んだのと同時だった。
「それから、向井。後で職員室に来てくれ」
それだけ言い残すと、担任の教師はすたこらさっさと教室を出ていった。
え、と僕が声を漏らしそうになったにも関わらず。
今の僕は、きっと血の気のない幽霊のような顔をしているだろう。
心臓が止まるという感覚は、多分こういう感じなのだと思う。
「じゃ、また明日」
つまらなさそうな顔をした佳月が、目の前を通り過ぎていった。
僕の過ごした今日と、隣で帰る用意をしている男子生徒の今日は、ほとんど同じだった。と思う。
「風邪か?」
黒縁眼鏡の奥は黒板を見ていたけれど、それが僕に向けられた質問だとすぐに分かった。
「今日元気ないなと思って」
「そんなことないけど」
出来る限り素っ気なく返事をしたつもりだった。
内心では、心臓が一瞬浮いたかと思うほど、ギクリとしたのだけれど。
この気まずい沈黙は、見透かされてのものなのか。
しばらくして「あっそ」と言い捨てると、佳月(カヅキ)は窓際のカーテンを荒く引いた。
カーテンを膨らませて入ってくる風は生暖かかった。
黄ばんだ白が、光に当たって血潮のように赤く見える。
急にガタガタと周りが席を立ち始めた。
いつの間にか終礼が終わっていたらしい。
慌てて立ち上がろうとした時、
「曾根」
「千暁(チアキ)」と準備万端の佳月が僕を呼んだのと同時だった。
「それから、向井。後で職員室に来てくれ」
それだけ言い残すと、担任の教師はすたこらさっさと教室を出ていった。
え、と僕が声を漏らしそうになったにも関わらず。
今の僕は、きっと血の気のない幽霊のような顔をしているだろう。
心臓が止まるという感覚は、多分こういう感じなのだと思う。
「じゃ、また明日」
つまらなさそうな顔をした佳月が、目の前を通り過ぎていった。