少年少女リアル
 メジャーを発見すると、元橋さんは今から魚でも料理するかのような目付きで僕を見た。

「佳月の方が適任だと思うけど」

横で笑う本人に目配せをしながら、逃れ辞を並べる。
どうせなら、筋トレが趣味の佳月を測ればいい。
僕を基準にしたところで、どうせ人によって寸法を変えなければならないのだから。
長身で、中肉中背の佳月に文句はないだろう。

「細身の方が女の子受けが良いのよ」

どういう意味だ。

反論しようとすると、元橋さんは「邪魔だ」と強引に僕の腕を上へ押しやった。仕方なく、後頭部の後ろで手を組む。

こういう時、女は男より強いと思う。

視力が悪いのか、目を細めて目盛りを見ている。それを読み上げると、暇そうにしていた男子生徒が慌ててメモを取った。

腰周りにあったメジャーがするすると胸囲へ回される。

「曾根君って、彼女いないの?」

「何で?」

「何となく。頭脳明晰で眉目秀麗、これだけ揃えば面白いくらいモテるんじゃないかと思って」

有難い事に、他人から見ればそんな風に見えるらしい。皮相的な見方でしかないけれど。

「……そんな事ないよ」

自嘲の笑いを漏らすと、胸囲を測っていた元橋さんと近い距離で目が合った。
生憎、僕がそうでないのは性格に難があるという事か。元橋さんが押し黙ったのも、僕が向井さんを傷付けたのも。きっとそのせいだ。
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