少年少女リアル
 採寸を終えると、元橋さんは何やら一人呟きながら、紙と睨めっこを始めた。

僕の事はそっちのけで、男子は固まって何やら会議をしている。
僕が言うのも変だけれど、男が四人集まっているのを眺めるのは何だか暑苦しい。そこに混ざり込むのはもっと暑苦しそうだ。

「ねぇ、暇?」

ぼんやりしていたように見えたのか、平野さんに肩を叩かれた。

今度は何だ。
暇じゃないと答えたら、一体何て言われるのだろう。

「看板の土台取りに行ってくれない?」

暇かどうかも答えていないのに、悪いけど、と話を終えられてしまう。相手を断らせない頼み方が、どこかあの女教師を彷彿とさせた。

「どこ?」

「第二体育館」

さらりとそう言ったが、第二体育館はここから遠い。
しかも、この暑い中、看板を運ばせられるとは。聞いただけで、顔が引き攣る。
力仕事の時だけ非力ぶるなんて。女は狡い。

「それとも、女子にあんな重い物を運ばせる気?」

と、向井さんを一瞥する。
あんな、か細い腕で持てるわけがない。皮肉にも、彼女の腕力の限界を僕は知っている。呆れ笑いが出るほど、非力そのものだ。

それを知っていて断れるはずもなく。
いや、と口から先駆けて出た言葉に、追って、了承を付け足した。

「結構大きいから二人くらい要ると思う」

そう言い終えないうちに、平野さんは暑苦しい会議場へ突っ込んでいった。
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