少年少女リアル
 向井さんの考えた構成では、数ヵ所立体的な部分を作るらしい。少し難点もあるが、彼女は意外と計画的に構成を練った方だと思う。

「ここにフリルをつけたいんだけど」

細い指が緩やかな曲線をなぞる。

「結構材料が要りそうだ」

フリルをつけるのは次回だ。今から買い出しなんて、時間の浪費でしかない。
手っ取り早いのは、今既に買い出しで出払っている人に頼む事だけれど、それも何だか気が引ける。

「衣類はもう買って来たの」

え、と聞き返す前に、彼女は丸々とした袋を僕に寄越してきた。
中には、布が二、三種類と、レースやフリルが溢れ返っている。見るからに、女の子らしい感じはしたけれど、材料は的確なのだと思う。

なんだ、やるじゃないか。
登校して早々、慌てて買い出しへ行った調理班より、幾分も要領が良い。

「偉いね」

感心のあまり、思わず、失礼な事を口走ってしまった。顔が強張る。
ごめん、と呟くと、人の良い笑顔で、何が?と言われてしまった。

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