少年少女リアル
「どうしてそう思う?」
この手の話は苦手だったけれど、夏目さんの推測には少し興味がある。
あんなにも無愛想なのに、人間観察が趣味だなんて可笑しいじゃないか。
「曾根君って、クールな感じがするけど実は優しいのよね。天然で。だから惹かれる人って、少なくないと思う」
内容はどうあれ、意外にも、きちんとした根拠を述べられてしまった。
少なくとも、夏目さんからの評価は言葉通りなのだろう。
「じゃあ、すぐフラれるって思った理由は?」
「クールだから、かな?」
寄って来るも離れて行くも、理由は同じという事か。
「モテる」の概念なんて、浅はかだ。
「ふーん。一緒にいて楽しくない、と」
「違う。一緒にいて楽しいか楽しくないかは、その人との相性次第。私、曾根君と一緒にいて、つまらないと思った事なんてあんまりないよ」
偽らず「あんまり」と言ってしまう正直さが夏目さんらしい。
「人に対してクールと言うか、欲がないと言うか。恬淡寡欲って感じね。受け身過ぎて駄目なんじゃない?」
「自我がないって事?」
「悪く言えば、ね。恋人に対してもそんなんじゃ、相手が不安になるんでしょうよ。まぁ、これは一般論だろうけど」
全く。直球に言ってくれる。
自我がない、だなんて。普通の人は気を遣ってそんな事は言ってこない。
けれど、不思議と嫌な感じはしなかった。夏目さんほど個性的で自我のある人に言われたら、納得しざるを得ないという事だろうか。
本当、僕の感性は良く出来ている。