少年少女リアル

　冴木がいとも簡単にネクタイを締めたのを見て、案外自分が不器用だという事を知った。

「曾根って、もしかして不器用？　すっげー意外」

何とも厭味な顔だ。
この表情はどこか佳月を思わせた。という事は、佳月が厭味っぽい笑い方をするという事か。

「さぁ」

「怒るなよ。冗談だって！」

いや、佳月よりかは幾分も気さくか。冴木の周りにいつも人がいる理由がほんの少し分かったかもしれない。

「あはは、何かお前可愛いな」

これ以上何か言っても効果がなさそうだ。
笑っている冴木を無視し、袋の残りを手に取る。底にあった黒い衣装は二つに分裂した。こんな酷暑の中、背広だけでも暑苦しいというのに、ベストまで着ろ、と。僕を殺す気か。

ふと顔を上げると、眉を曲げて笑う向井さんが目に入った。

「何笑ってんの」

「あはは、ごめん。だって可笑しいんだもん、曾根君の拗ねた顔」

不覚にも、優しい笑い方をする人だと思ってしまった。時々、自分が怖くなった。

「うるさい」