少年少女リアル
「もういいの、先輩の事」
「……でも、泣くほど好きだったんだろ」
「だって、彼女がいる事、言ってくれなかったんだもん。優しくされて、思い上がって、私馬鹿みたいじゃん」
自嘲の笑いが悲しい。
こんな顔するくらいなら、一発殴ってやれば良いのに。
「もういいんだよ。もう、」
「ふっ切れてないから、そんな顔してるんじゃないの?」
「そんな事、」
「そんな事ない? じゃなきゃ、そんな顔するなよ」
彼女がますます泣きそうな顔になっていく。暗くても分かった。
彼女の方へ振り返る。僕は金縛りのような感覚に囚われた。
目が合った瞬間には、もう、遅かった。
「違う……違うよ! 私、今は曾根君が」
やめろ。
やめろ。
その続きを言うな。
「好き、なの」
纏わりついていた何かが、しめたとばかりにぎゅっと僕を苦しく締め付けた。