少年少女リアル
 遠くで、小さな爆発音がいくつか鳴った。光は見えてこなかったけれど、ぼんやり花火が打ち上がる音だと分かった。

いつの間にか止まっていた足が、余計に居心地を悪くさせる。


「忘れられるわけ、ないよ……」

彼女の小さな声が、いつもより小さく呟く。

「そんなの、忘れられるわけないじゃん」

大粒の涙が一粒、また一粒と落ちていく。最初みたいに、今度は綺麗なものじゃない。ぽろぽろと言うより、ぼろぼろと。

「確かに、最初は……意識してたよ、あの事」

冷静になり掛けていた頭は、受け身に彼女の声を耳へ流す。

「でも、今は違うの! きっかけはそんなんでも……今は純粋に曾根君が好きなんだよ!」


何が純粋なんだよ。
これのどこが純粋だって言うんだ。

汚れていて。


生々しいほどに汚れていて。

感情を翻弄されただけの恋愛ごっこだ。
美しいものなんて何もない。

「じゃあ、それは向井さんの思い違いだ」

自分でも恐ろしくなるほど、静かな口調になった。

冷たい目、言葉。
冷たい、僕。

「早く忘れた方がいい。僕等に恋愛なんて、無理だよ」

再び歩き始めると、背中越しに、彼女が静かに泣き崩れたのが分かった。
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