少年少女リアル
中庭に植えられたサルスベリが溢れんばかりの花を咲かせていた。
美しくとも、進学校にサルスベリを植えるなんて縁起でもない。
枝の先に白い花が集まっていて、人の手が花束を持っているみたいだ。
部屋の中にまで甘い香りが漂ってきている。本にまで匂いが染み着いてしまいそうなほどだ。
返却手続きを終えると、女子生徒は急ぎ足で図書室から出ていった。荒く閉めたドアの音が響く。
文化祭シーズンで忙しいからだろうか、いつもに増して今日は来室者が少ない。
分離スペースへ戻ると、夏目さんがいつものように素っ気のない礼を告げた。
いつもは一瞬しか顔を上げないくせに、今回は本へ戻した視線が再び僕に向けられた。
こうもじっと目が合うのは、何だか奇妙だ。
僕が首を傾げると、夏目さんはふっと笑った。不気味だ。
「そういえば、シャーペンの芯みたいだったわよ」
全然、「そういえば」じゃない。僕には何の話か伝わっていないのだから。
「何が?」
今回ばかりは考えるのを止め、単刀直入に聞いてみる。彼女は未だ悪役のように口を歪ませたまま。
「曾根君がよ」
全くもって、奇々怪々だ。
失礼だという事しか伝わって来ない。
美しくとも、進学校にサルスベリを植えるなんて縁起でもない。
枝の先に白い花が集まっていて、人の手が花束を持っているみたいだ。
部屋の中にまで甘い香りが漂ってきている。本にまで匂いが染み着いてしまいそうなほどだ。
返却手続きを終えると、女子生徒は急ぎ足で図書室から出ていった。荒く閉めたドアの音が響く。
文化祭シーズンで忙しいからだろうか、いつもに増して今日は来室者が少ない。
分離スペースへ戻ると、夏目さんがいつものように素っ気のない礼を告げた。
いつもは一瞬しか顔を上げないくせに、今回は本へ戻した視線が再び僕に向けられた。
こうもじっと目が合うのは、何だか奇妙だ。
僕が首を傾げると、夏目さんはふっと笑った。不気味だ。
「そういえば、シャーペンの芯みたいだったわよ」
全然、「そういえば」じゃない。僕には何の話か伝わっていないのだから。
「何が?」
今回ばかりは考えるのを止め、単刀直入に聞いてみる。彼女は未だ悪役のように口を歪ませたまま。
「曾根君がよ」
全くもって、奇々怪々だ。
失礼だという事しか伝わって来ない。