少年少女リアル
 僕は何も聞かなかったけれど、どこへ向かっているのか何となく分かった。
前を行く彼女も、何も言わなかった。

ずれて響く足音だけが、僕の頭に木霊する。

さっきまで活気のあった廊下はもう人気少なく、青白い床には、静かな柱の影のみが模様のように映っていた。

丈の短いスカートから伸びた細い足が、一段一段、階段を上っていく。
数段下にいた僕からは、襞が揺れるごとに、突破線に至るか至らないか、ギリギリだった。


隙だらけだ。

そんな風に感じるのは、僕が男だからか。それとも、僕だからか。

逃げるように、僕は目を伏せた。


ギーっと鈍い音が鳴ると、同時に光が漏れ出てきた。初めは細く、次第に視界いっぱいに。
僕の目が馴れないうちに、彼女は光の中へ融け込んでいった。
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