Taboo Apple ~side Ryota~
「りんご」











呼びかけても人形のように張り付いた顔のままこっちを見るだけで






泣くことも、起こる事も、勿論笑うこともなかった







「兄さん。りんご、可笑しいんじゃない?」







初七日が終わって、少しずつ日常を取り戻りつつある






兄さんと秀司の時計の針が動き出しているのにりんごだけが置いていかれていた






「……りんごちゃんの悲しみは俺や秀司より深いだろうからね」







ネクタイを結ぶ手を止め、寂しそうな顔でこっちを見た







「少しで良い。りんごと過ごす時間を作れない?兄さんたちは血のつながりがなくても家族なんだってわかる時間を」






あの日秀司が言っていた言葉。りんごは自分たちにとって大切な家族だと。








でも、まだりんごは……








「ああ。お前に言われるなんて俺も焼きが回ったな。悪かったな。ずっと手伝わせて」








電話を受け駆けつけた日からずっとこの家にいて手伝っていた






というよりはりんごの傍にいた。









「悪いけど、今日でいったん帰る。仕事も溜まっているし。何かあったら連絡して」












「ありがとう」

< 21 / 38 >

この作品をシェア

pagetop