今日も地球の上では☆2
「ああ……もうそろそろ、行かなくちゃ……」

お母さんが名残惜しそうに呟いた。



「えっ? 『行く』って?」

「風花の事が心配で、今までずっと傍に居たけど……もう安心して行けるわ」



心の何処で、その意味を理解していた。

でも、理解したくなかった。



「お母さん……居なくなっちゃうの?」

「今度は、遠くから見守っているから……あなたと彼が幸せに暮らしているところを……」

「イヤだよ! お母さんと話が出来たら、いっぱい話したい事があったのに!」



私はそう言うと、ギュッと唇を噛んで俯いた。

すると、お母さんが言った。



「風花……実のお父さんの事を、許してあげて」



えっ?

お母さんの意外な言葉に、驚いて顔を上げた。



「確かに、あの人の愛情表現は歪んでいた。でも、あの人は両親から虐待されて育てられた過去があって……私には自分の理想の母親像を求めていたの」



そんな話は、お父さんからも祖父母からも聞いてなかった。



「私のお腹にあなたが宿った時は、『自分の両親みたいにならないよう、愛情をたっぷりかけて可愛がる』……口癖のようにそう言って、あなたが生まれるのを楽しみにしていたのよ」



『あの人』が?



「でも、赤ちゃんであるあなたは母親を恋しがり、自分がいくら愛情を持って接しても自分を求めてくれない……

 そして、母親である私はあなたに掛かりっきりだったから……

 それで1人だけ取り残されたような錯覚をし始めた所から、あの人は変わっていったの」



初めて聞く真実だった。


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