地獄からのメッセージ
それからと言うもの、俺は新しい作業に専念していた。
まずは、赤外線を感知するアイグラスを作り、その次に暗証番号の解読機が出来上がった。
これは、額縁の裏にあった金庫を開ける為である。
あそこの金庫は0~9までのデジタル数字の配列で、昨年タイの政府官僚の一人から見せてもらった最新式の物で、日本製だと自慢していたのを思い出した。
それと同じ物がついていたのであった。仕組みを知っている俺にとっては、容く解除できる。
最後に、リモコンで遠隔操作の出来る小型の爆弾を作った。
これは、日本に帰って来てから拳銃と共に手に入れたプラスティック爆弾の一種でSS300Z式の最新型の強力な奴である。
それらを1週間で作り上げた俺は、次の定休日の朝、まだ夜が開ける前に家を出た。
日垣グループが最近建設したばかりの工場が静岡県の沼津市から北へ40km山奥へ入ったところに出来たと言うのは聞いていたが、どうやらそこで武器などを作っているのではと目星を付けていたのである。
東京から東名高速に乗って沼津インターで降りてから、愛鷹山の裏手にある位牌岳と越前岳の中間点にそこは在った。
こんな辺鄙な場所に工場を建てること事体オカシイ話である。
俺は途中、長泉町の沼津国際カントリークラブへ通じる山道の手前に在ったコンビニで、食料と飲み物、それとジッポーのオイルを10缶全てを買い占め、漂白用のブリーチを2本と塩素系の洗剤を4本購入した。
それらを車に詰め込むと、一気にセコにシフトを入れて愛鷹山に入って行った。
山を登り、工場が見渡せる絶好の場所を探した。
暫くすると岩陰に隠れるように小さな窪みが在り、その横には小さな小川の上流が在り、それは狩野川の支流へと流れ込んでいる。
南側には駿河湾が、東名高速道路と第2東名高速道路越しに見える。
俺は、まずトランクの中の物を全て取り出し、そして車を草で覆い隠した。
それらの荷物を窪みに置き、そして、ニコンの双眼鏡で工場の中を覗いてみた。
見れば見るほどおかしい事がある。工場の周りには監視塔が四方に在り、それらを繋ぐように塀で囲まれ、まるで要塞の様になっている。