地獄からのメッセージ
5章 奇襲
俺は今、クルンテープに在るドームアン空港に降り立った。
空港内は、相変わらずうだるような暑さと、埃っぽい人込みばかりが目に付く。
難なく税関とイミグレーションを通り、一歩外に出ると、より一層の暑さで一瞬眩暈がしそうになったが、時期慣れて来た。
何時の間にか、大勢のタクシードライバー達に囲まれていて、
『シャチョウサン、タクシーイル?』
『ドコマデイコウカ?』
等とポン引きのごとく声を掛けてくる。
俺はタイ語で、
『マイアオ!パイセー!』(要らん!あっち行け!)
と言って空港からリムジンバスに乗り込んだ。
冷房が効いていて心地良く汗が引いていく。
暫く目を瞑って先日の山の中での事を思い出していた。
ランビットは倒した。
しかし、彼の後ろにはもっと大きな組織が在る筈だ。
そいつ等を倒さないと気がすまないし、枕を高くして眠れない。
まずはランビット総督が昔、手を組んでいたマフィアのボスに会う事にしょう。
しかし、もしこちらの事が知られていたら構う事は無い。
皆殺しにするまでだ。
そんな事を考えている内にバスはバンコク駅前に着いた。
バスを降りた俺は、其処からサムロー(オート三輪式タクシー)に乗ってシーロム通りで降りた。
近くにあるチャイナタウンに入り、小さな食堂に入った。
空いていた椅子に座ると奥から老婆が出て来て、
『チョップ タン アライ ナ カ?』(何食べますか?)
と尋ねて来た。俺は、
『パーチャラメ ヌン ロコ ヌア ヤーン ロコ ナームウイサキー ノーイ』
と注文をして蒸したマナガツオと牛肉を乱暴に焼いたものを水割りで流し込んで食事を済ました。