地獄からのメッセージ
『チェックビーン ノーイ』(おあいそ)
と言うと、
『ロイハーシップ』
と150バーツであると言うので、300バーツ渡して、
『レオニー ナイ ピアット ティーナイ ヤ?ポム プワンカン.』
(ピアット社長は今何処にいる?俺は友人だ。)
と告げると、先ほど渡した300バーツをサッと懐に仕舞った老婆は、
声を潜めて、
『レオニー ナイハン ユー ティー ホアヒン ナー カ.』
(今、社長はホアヒンに居ますよ。)
と簡単に教えてくれた。
このピアットこそが、タイ人口の30%をほこる華僑を取り仕切るマフィアのボスである。
彼は、マフィアであり、実業家でもある。
タイ国内にある中国系のデパートやホテルは、殆どが彼の所有であり、チャイナタウンは彼の身内が取り仕切っているのである。
タンチャナブリに有った小さなケシ畑でマリファナを作って儲け、アヘンで大きく膨らみ、其れで得たお金を資金に事業を始めたと言う訳だ。
彼には、人を惹き付ける力が有り、多くの華僑達は彼を崇拝している。
しかし、中には其れを快く思わない外れ者もいて、そいつ等から身を守る為にランビット総督と手を組み、彼の力を絶対の物にしようとした訳である。
俺も、傭兵をしていた時に一度彼の命を救った事がある。
対立するマレー系華僑と国境の手前で遣り合った事が有るのだ。
マレー半島には、ピアットの弟が栽培する大麻畑があり、其れを欲しがったマレー系の華僑が国境を越えて遣って来て、偶々其処に居合わせたピアットは、彼等に追われる羽目になったのである。
運良くその場は列車に飛び乗り逃れる事が出来たのだが、ハジャイ駅で彼等の仲間が乗り込んで来て結局埒されてしまったのだ。