地獄からのメッセージ
幸い、15分程サムローで行ったところに空き部屋が見つかり、フロントでキーを貰い、4階の端の部屋に入った。
しっかりとロックを確認して、ドアのノブに針金を巻き付け、其処から冷蔵庫まで引き込み、その上にある花瓶に巻き付けた。
その下には、グラスを並べ、もし誰かがドアを故意に開けようとすれば、冷蔵庫の上の花瓶がグラスの上に落ちて、素晴らしく大きな音を立てて侵入者を知らせてくれると言う寸法だ。
それでも一応全ての荷物を天井裏に放り込みシャワーを浴びた。
勿論S&Wの38口径リヴォルヴァーを携えて!
俺はベッドに行こうと思ったが思い直してベッドに人型を枕でつくり、ドアから死角になる所にソファーを引き摺っていき、それを倒してその蔭に身を潜めるようにして眠った。
翌朝、微かな物音で目がさめた。
どうやら、何事も無く朝を迎えたらしく、隣の部屋の宿泊人が、ラジオを掛けながら何やら荷作りでもしてる音が、安っぽいホテルの壁向うから聞こえてきたのである。
俺は、「333」と言うタイのタバコを吸いながら天井を眺めていた。
数匹のヤモリが行ったり来たりしているのをみていたが、2本目を灰にした所で申し訳程度の備え付けの冷蔵庫を開き、中に有ったシンハービールの栓を抜きビンのまま一気に飲み干した。
そして、ソファーの隙間に差し込んでいたS&Wを抜き取り、それを持ってシャワーを浴びた。
この国の暑さには慣れている筈の俺だが、かなり体が汗でべとついている。
生暖かい水しか出ないこのシャワーを30分程出しっぱなしにして漸く冷たい水が出始めた。
その水で頭の中を覚醒させるように冷やし,漸く眠気も取れてきた。
俺は着替えを済ませ、荷物をまとめてからフロントにコールを入れ、ついでにタクシーを呼んでおくように頼んだ。
数分後、階下に降りてチェックアウトを済ませる頃に漸くポーターらしき青年がタクシーを捕まえたと知らせてきた。
彼に50バーツ渡して外に出てタクシーに乗り込んだ。
運良く冷房付きのタクシーを呼んでくれていたので助かった。
この暑さをホアヒンまで味会うのは御免だから。
これからの行動を頭の中で整理していた。