地獄からのメッセージ
流暢な英語を使って部屋を今から取れるか聞いた。
シーズンを外していたし、お祭りも何もない時期なので、運良くツインの部屋を取る事が出来た。
ロビーには、洒落た造りの大理石の噴水が有り、その回りに幾つかのテーブルと、その間に観葉植物が置かれていた。
奥にはラウンジや喫茶コーナー等もあり、高い天井にはクリスタルのシャンデリアが吊るされ、涼しいエアコンの風が優しく降りてきている。
部屋に案内され、鍵を開けると、天井までの大きな窓が奥の部屋一面を明るく浮かび上がらせていた。
その窓の向こうにはロングビーチが有り、タイランド湾(旧シャム湾)が見渡せた。
荷物を置き、ボーイにチップを渡してから取り合えずシャワーを浴びる事にした。
チェーンロックを掛け、荷物をユニットバスの洗面台に置き着ている物全て脱ぎ捨てた。
服を着ている時には判らなかった、獣のような筋肉が鏡に映し出された。
胸囲はゆうに1mを超え、腕は鍛え上げられた鋼のように引き締まっている。
そしていたるところに銃創や刺跡がある。
おまけに今回はランビット達に手痛く遣られたお蔭で、火傷の跡や内出血も未だに残っている。
着やせするタイプの俺は、良くチンピラにからかわれたりと絡まれるが、大抵ワンパンチで倒し、やられた相手は慌てて逃げていくのである。
シャワーから出ると、ラフな格好に着替えてルームサービスを頼んだ。
チリ産の白のスパークリングワインと地元で取れた魚介類のブロシェット、それに300gのアンガスビーフのテンダロインステーキを持って来てもらった。
それらを、海を眺めながらジックリと味わって食べ、これから始まる復讐劇第2幕の台本を頭の中で書き上げていった。