地獄からのメッセージ
帰宅してから黒のシャツと黒のズボンを着込み,ラバーソールの靴を履いた俺は,黒い小さなリュックを背負い部屋を出て、近くの駐車場に向かった。
そこは1年間駐車代金前渡で借りている屋根付きの駐車場で,そこには目立たない黒の日産スカイラインR32・GT-Rが止まっていた。
勿論悪戯されると困るのでエンブレムを取り外し,エアロパーツでフェンダ部分からスポイラーまで加工して,マニアが見ない限り直ぐにはRと気が付かないようにしている。
21インチのタイヤを履いたスカイラインのエンジンを掛けると,地響きがした様な低いRB26DETT独特の音と共にパネルのタコメーターをゆっくり6000回転まで持って行く。
冬でもエンストしない様に少しアイドリングポイントを高めに設定してある。
その他にも外見からでは解らない様な所を数カ所も改造している。
出力280PSを400PS以上まであげた六速マニュアルの怪物マシンである。
勿論無許可であるが・・・・・・・・・
ローからすかさずセコ・サードとシフトアップして行きながら車を新宿方面へと向けて行った。
暫くすると,大きな建物が見えて来た。
そこは,昔お世話になったが何も助けてはくれず、俺達を見捨てた株式会社日垣グループのメインビルである。
総資産数兆円と,国家予算より沢山のお金を持っている。
そのくせ,怪我をしたので海外渡航災害保険が降りたはずなのに一銭もよこさず,おまけに難癖をつけたと首を言い渡されてしまったのである。
そこのビルは,年間五百万円近くお金を掛けたセキュリティーシステムが導入されており,その為,警備員は深夜にもなると2人だけとなってしまう。
この建物の何処かにタイの反政府軍に加担した証拠があると睨んだ丈治は,そっと闇に紛れてビルとビルの隙間へと身を滑らせて行った。