地獄からのメッセージ
其処から車を目立たない所に止め、歩いてゲートの前まで来たが、歩調を緩めずそのまま通り過ぎていった。
そして、丁度、監視塔の死角になる陸橋の階段の下にたどり着いた。
背中に背負ってあるナップサックから小型の遠隔操作用のリモコンとプラスティック爆弾を取り出した。
信管を差込み、その爆弾を其処から50mほど離れた所に路上駐車している民間の乗用車のシャフトの部分に取り付けた。
俺は更に軍用施設の裏側に行き、ザイールを肩に巻き付けそのロープの先に鉤を取り付けた。
そのまま、近くの電信柱に取り付けてあるトランスボックスから建物に伸びてい
るテンパールボックスをドライバーで抉じ開けた。
その中の一つが非常用の電源をとる為の、施設内発電所と繋がっていたのを見つけ切断する。
テンパールの電源を切断するのと、リモコンで車を爆破するのをほぼ同時に行った。
僅かだが、これで事故による停電と勘違いしてくれるであろう。
館内では、タイ人の常駐スタッフが慌てふためき騒いでいるのが聞こえてくる。
その隙に俺は一気に壁を乗り越えた。
中に潜り込むのは容易であった。
皆が慌てて外に飛び出したり、停電の原因を調べる為にあちこちのドアが開きっぱなしになっているからである。
その中の一つのドアを潜り、中に潜入する事に成功したのである。
其処から、武器室や軍備室へ通ずる廊下を用心しながら走り抜けていった。
突き当たりのドアが武器室である。
その扉はロックが掛かっていたが、長年傭兵として働いていた俺にとっては、自転車の鍵を開けるのと同じくらい簡単に開けられる。
襟に仕込んでおいた細い針金状のものを2本取り出し、鍵穴に差し込んだ。
先を変形させたピアノ線である。
指先に神経を集中させ探ると10秒ほどでカチッと言う音と共に扉が開いた。
その中に滑るように忍び込みドアを閉めた。