地獄からのメッセージ
6章 強奪
俺は今、カジノのポーカーのテーブルで大きく勝負を掛けている。
綿密に練った作戦を開始するチャンスを狙いながら!
壁に掛けて有る時計を見るふりをして、両替所の奥に目を凝らす。
若い女性が3人、暇を持て余しながら下らない会話に終始している。
時間は夜の11時を少し廻った所である。
両替所の両脇には、ボクサー崩れのような男が2~3人、いつもいる。
此処は、12時でディーラーも警備も順番に交代していく。
その時間に照準を合わせて12階と10階と8階の各階3部屋ずつ計9部屋にそれぞれ12時・12時5分・12時10分・・・と5分おきに最終的に12時40分まで発煙筒が発火するようにタイマーを仕掛けてきた。
ホテルのスタッフに気付かれない様に部屋に忍び込んで、おまけに見つけられないようにセットするのには、流石に3日掛かってしまった。
どうにか週末の、この日に間に合ったと言うわけだ。
そして、最後に発火する12階の備品等を置いてあるリネン室のクローゼットの上に仕掛けたのは、本物の火災を起こさす為に発煙筒ではなく、フィルムを入れるパトローネの中にガソリンを詰め込み、それがタイマーによって少量の火薬と共に爆破・引火を誘発させ、それらがクリーニングが済んだシーツや枕カバーに燃え移ると言う仕掛けにしてある。
従って、俺がカジノで行動できるのは12時45分くらいからだろう。
その間に火災によってパニックになったカジノの客を追い出さなければならない。
そして、本当の火災が起きて、両替所のキャッシュを移動さそうとケースに金をしまい込み、何処かへ移動さそうとした時がチャンスである。
その機会を、今はじっと待っている訳だ。
階上では、発煙筒の為に殆どのスタッフや警備の人間がこの場から居なくなるだろうし、週末の深夜だから、かなりの現ナマが手に入るだろう。