地獄からのメッセージ
 以前から見当を付けていたセキュリティーシステムから逃れる方法として、ビルの横に付いたトイレの窓らしき所から進入する事にした。


そこは、3階以上の階に有る小さな小窓である。


ビルとビルの間は40cm程しかない。


見た目ほっそりとして見える中山は、着痩せして見えるが実は鍛え上げられた、分厚い鋼の様な体なのでかなり狭く感じる。


隣のビルに背中をあてて足と膝と手を駆使して3階まで上がった。


窓まで来て、念には念を入れる為、窓を開けずに窓ガラス一杯にダイアモンドで出来たガラス切りを使って、刳り貫く事にした。


まず、ガラスに吸盤型を取り付けて、切り取ったガラスが向こう側に落ちないようにして、すばやくガラス切りで刳り貫いた。


流石に、トイレのガラスまでは気を付けていなかったらしく、簡単に入り込めた。


護身用に右足に付けたミニホルスターの中から上下二連の超小型ディリンジャーを取り出しておく。


脇の下のホルスターからは、ベレッタ・ブリガディールが鈍い黒光りの銃握を覗かせている。


トイレのドアには、警報用の配線が無いので、安心した。


外の音に全ての神経を集中して、そっとドアを少し開けた。


小さな細い棒の先に付いた鏡を差し込み、外の様子を伺う。


誰もいないのを確認してからドアを40cmほど開けてすり抜けるように廊下に出た。


長年の訓練から、真っ暗でも夜目の利く中山にとって、小さな非常灯の有る廊下は、普通の人が昼間感じる明るさ位に良く見える。


廊下の奥にある階段を使って、22階まで用心をしながらそれでも素早く監視カメラが無いのを確認しながら速やかに昇った。


最上階の22階まで来て、社長室のドアの前で立ち止まった。


そっと試してみたが、ドアには鍵が掛かっていた。


それでも、簡単にドアを開けることは出来るが、あえてそれをせず、通路の突き当たりに有る点検口から進入する事にした。


今は、セキュリティーをいじって警戒されたくないのだ。
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