地獄からのメッセージ




ピアットとは最初、話しをして詳しい事を聞いたり、出来れば手助けして貰おうかとも思っていたが、日垣と一緒に居るだけで十分死に値する。


おさらばである。俺は、ビルの陰から顔を少し出して、外の様子を伺ったが、動く者は一人も居ないし、生きている方が不思議である。


しかし、用心深い俺は直ぐに動かず、その後数分様子を見てみた。


案の定、近くに居た部下どもが車で駆けつけて来た。


それを俺は、今度は2階に降りて、一人ずつ確実に仕留めていった。


遠くで、パトカーのサイレンが聞こえてきたのを機に、俺はビルから離れた。


もうその時には、誰も生きている者は居なかった。


歩いて止めてある車の所まで行き、エンジンを掛けてラマⅣ世通りから、新しく出来たチャロエンクルン通りに向かい、左手にチャイナタウンを眺めながら、突き当たり手前を右に折れてアットサダーン通りに入った。


カオサン通り手前に在る、ロイヤルホテルに車を突っ込んだ。


ボーイが出てきて「車を移動します。」と言うのを手で制して、自分で出来るからとゲートの中に入って行った。


荷物を纏めてバッグに詰め込み、地下2階の駐車場からエレベーターでロビーに降り立った。


『バーン ミー マイ ナ クラップ?』
(部屋は空いていますか?)


と尋ねたら、ニコニコしながら「大丈夫です。」と言って、カードを出してきた。


そのカードに、偽の名前を書き込み、前金で1万バーツ払い、ツインの部屋をとりあえず1週間借りた。


多分、これからが最後の正念場だろうから、今のうちに体を休めておかなければ行けないし、ここ数日はまともに寝ていないので、心身共に疲れきっていたのだ。


キーを受け取り、「部屋に案内します。」と言うのを、軽く手を振って断り、エレベーターに乗り込んだ。


自分の部屋は、6階の3号室(603号室)である。


部屋に入り、カギを掛けて暫くは窓の外を眺めていたが、その内に睡魔が襲ってきたので、ベッドにそのまま転がり込んだ。


電話で夜の7時に起こして貰うように頼んでから、静かに目を閉じた。


そして、先程までの事を思い出していると、何時の間にか眠っていた。


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