地獄からのメッセージ
点検口から社長室の上まで見当を付けて、天井裏を這って行った。
社長室の点検口のロックを中から開けて、猫のように音も無く中に忍び込んだ。
デスクの中を開け様としたが、ここにも鍵が掛かってあった。
襟から細いピアノ線を2本出して、見当を付けて軽く折り曲げて差し込み、5秒ほどでロックを解除した。
中には、東南アジア関係の書類とフロッピーが4枚、それにCD-ROMが2枚入っていた。
中山は、背中の小さなリュックから最新式の小型ノートパソコンを取り出し、それに差し込んでみた。
プロテクトが掛けてあったが、ご丁寧にパスワードも一緒に入っていたので、すぐに覗く事が出来た。
それらを全てコピーして、元に戻した。
その後も部屋の中を物色して、金庫を壁に掛けてあったラファエロの絵の裏から発見した。
その金庫の横に不自然なテンパールBOXが有ったので、今はそれを開けずに元
通りに絵を戻し、書類に目を通す事にした。
そこには、アジア各国で、工場を創る為に切り開いた山々から採取できた木材の輸入の価格表や、その工場での裏取引きで儲けた裏金等が記載されていたが、そんな微々たる小銭儲けなんかは無視した。
と言っても、何千万単位の世界である。
CD-ROMのなかには政府絡みの大金が動いているのである。
全てを元通りに戻した中山は、電話のフックがONにならない様に慎重に受話器を取り外した。
電話回線はセキュリティーに寄って管理されている可能性が高いからである。
フックの部分に灰皿を置きONにならないようにした。
受話器の背中部分を外し、中に超小型の盗聴器を取り付けた。
これは、仕事が終わってから、自分の部屋でコツコツと作った優れもののオリジナルである。
大体ビルの下から更に200m程先に車を止めても傍受できるのである。
しかし、一応用心の為に窓側にも一つ、コンセントの裏側に半永久的に使えるその場で電源を確保出来るタイプの物を取り付け、元に戻した。
再び天井にある点検口に入り、内側からロックした。
その後、用心しながらビルを出たのは午前1時ごろであった。