地獄からのメッセージ
日垣電機本社ビルの近く迄来た。
しかし、迂闊には近ずかず、向かいにある雑居ビルの裏からこっそり忍び込み屋上に昇った。
15階建ての、このビルからでは22階にある社長室の中は覗けないが、そんな事はもう如何でも良い。
明かりが漏れていると言う事は社長はまだ居ると言う事で、彼らが俺を始末したとの報告を待っているのであろう。
俺は、ジックリと狙いを定めて、真正面に見える本社ビルの大きな窓ガラスに向けてトリガーを引いた。
大きな音と共に真正面のガラスがコナゴナに砕け、深夜の闇の中に砕け散った破片が舞い落ちていった。
今度は、そこに目掛けて手榴弾を1個ずつピンを抜いては投げ込んでいった。
たかだか17~8mの距離、普段から石を投げて飛んでいる鳥に当てる事も可能なくらい、朝飯前で出来ていた俺にとってはそう難しい事ではなかった。
爆発が起きてはまた投げ込み、それを十数回繰り返した頃には、ビルは上半分が、コンクリート剥き出しの情けない建物に変わり果てた。
突然、頭の上のほうで銃声が微かに聞こえた。
俺は直ぐに建物の中に隠れて上をそっと覗いた。
どうやらまだ生きているらしい。
俺は、屋上への出口付近に身を隠しながらじっと耳を澄まして、夜でも見える目で社長室が有ったであろう当たりをみた。
すると、数人の男達がこちらの方に向けて、ライフルで狙いを付けているのが見て取れた。
上から、赤外線スコープ付きのライフルで狙われているのを、じっと待つほど俺は馬鹿じゃない。
直ぐに俺は、そのビルを抜け出して、今度は、日垣のビルに裏から廻って忍び込んだ。
先程の爆発で、セキュリティーは破壊されているから何の問題も無く入れた。
すぐに、地下駐車場に行き、車を探した。
彼の愛用のベンツはS55L-AMGである。
時速100Km/hに加速するまでに6秒程しか掛からず、それは、3バルブテクノロジーとデュアルイグニッションを備えた、SOHC3バルブのV型8気筒を使用しているからである。
オプシディアンブラックのこのAMGの総排気量は5,438ccのフラッグシップカーである。