失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】





知りたい



僕の中でそれが増大する

知りたいんだ

それがきっと

今の苦しみの始まり

全ての謎をしまいこんだまま

僕たちの前で死んでしまった彼

そしてその謎に苦しんでいる

兄と僕

そしてなぜか

兄の父親も知らない謎

誰が兄を陥れたのか

なんのために



知りたいんだ

彼の手紙が頭の中に翻る

そしてなぜか

見覚えのある電話番号

その番号に掛けてみたい

つながったその先に

なにが待つのだろう

あの人の彼

なにを知ってるんだろう

なにをしたんだろう

(危ないことはするな)

そういう彼の声が聞こえる

わかっている

これは犯罪

犯罪なんだ

明かすことの決して出来ない秘密を

僕らは人質に取られ

法を犯したやつらに

陽の当たる場所では手も足も出ない




兄が地獄から帰還して

まだ半月余り

本当に何もかも

終わったのだろうか…











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