失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
僕は封筒が破けるのもかまわず
手紙の束を引っ張り出した
例の紙を取り出す
前の手紙が床に散らばる
それは一種の破壊願望とも言える
凶暴な感覚だった
混乱と怒りの中にも僕は見ていた
またやってしまう…と
追い詰められたとき
僕には自滅する選択はないんだ
未来と日常を棄てて兄を選んでから
僕はパニック発作を全く起こさない
ギターの中だけに発散されていた
凶暴性
僕の血は元ヤンキーの親父から
正統に受け継いだ破壊衝動の血だ
いつも通り策なし
出口なし
でも兄貴
自分を殺すくらいなら
僕は
携帯を取り出す
怒りと緊張で震える指で番号を押す
何度か間違える
間違えているうちに気づく
ヤバい
こっちの番号も知られる
番号非通知に設定する
そして
発信ボタンを
押す
呼び出し音
自分の心臓が違う生き物みたいに
跳ね上がる
「はい…もしもし」
で…出た…
本当に出…た