失われた物語 −時の鍵− 《前編》【小説】
「君をこの何ヵ月凌辱し続けた…
君を踏みにじり汚し…唾を吐きかけ
犯し…そして今日…腹を空かせた
ハイエナ達に君の肉を引き裂き
放って与えた」
朦朧とした耳に彼の呟きが
淡々と響いていた
「君は私のトリックに見事にハマり
ついに身体を開いた…君の身体は
淫欲にまみれ満たされ…堕ちた」
そう…僕は堕ち…た
「…だが」
彼は低く囁いた
「堕ちたはずの君は…堕ちたはずの
魔境の闇の中で発光している…
汚れ…ない…どうしても君を闇に
染めることが出来ない…」
彼は空しく笑った
「なぜなんだ?」
彼はゆっくりと僕に向き直り
シャツの裾から手を入れ
僕の身体を片手でまさぐった
僕の死体のような身体が
独りでにピクンと反応した
「私が手ぬるいのか…」
首筋を唇が這う
こんな虚脱した身体なのに
まだ苦しいほど感じている
薄く唇が開く
声も出せず吐息だけが漏れる
僕は抵抗する力すら残っていない
彼が僕のシートベルトを外す
自分の重みを支えられずに
窓に身体が倒れかかる
「こんなにボロボロにしたのに…」
彼は残念そうに呟いた
「君は何で君を支えているんだ?」
僕のシートをいきなり深く倒す
一緒に僕の身体も倒れこむ
「まだ私の忍耐が足りないのか…」
彼が無抵抗の身体を激しくなぶる
独りでにガクガク震えてくる身体
自分の意志では反応すら出来ない
指が僕の中心をまさぐる
「私は君を憎んでいる…私が
落とせなかった者など未だかつて
一人もいやしない…だが最も憎悪
しているはずの君が…まだ私に
支配されないのはなぜなんだろう」
彼は僕の中に強引に入ってきた
灼けるような感覚が広がる
吐息だけが独りでに漏れる
「薬でボロボロにするのは簡単だ」
彼は僕を陰湿に犯しながら囁いた
「だけどそれでは復讐にならない…
君が君自身を貶めて自分を切り刻む
のを見た…いの…に…」
彼は僕の中に欲望の雫を注ぎ入れた